/ja あやつる YmrDhalmel

バレーボールを見た記録が多いです。主に北で、たまに南で。

やばい試合を観た。終わって欲しくない試合だった。

近頃、ヨノナカでバレーボールの話をするとなると、「消化不良」「煮え切らない」「歯がゆい」などというキーワードのオンパレードになる。それは「つまらない」「嫌い」に繋がりかねないネガティブなキーワードだ。
しかし、少なくとも個人的にはきょう観た試合で救われた。これでしばらくバレーボールを嫌いにならずにいられそうだ。

…ということで、この試合に関して書く場所を、別館ではなくこちらにすることを、帰りの電車の中で決めた。テキは手強いので書ききれる自信がないし、おそらく長くなると思う。でも書く。

背景

関東甲信越大学体育大会、という、大会名にある地域に所在している国公立大学(全部ではない)による選手権大会がある。50回以上続いているようだ。以下に書くのはその大会の決勝戦についてである。

筑波大学にとってのこの大会は、以前はV・プレミアリーグ所属チームにとってのサマーリーグの如く、普段出番のない若い選手に機会を与える場所という位置づけであったと聞く。ところが、昨年あたりからそうも言っていられなくなってきたようだ。そもそもの所属メンバー減少に加え、他大学の躍進という要因が大きい。それでも、昨年は主将(菅=現NEC)・副将(永野=現パナソニック)あたりは客席で見つめる、という布陣でいけていたのだが…
一方、昨年に続いて決勝に進出してきた宇都宮大学は、今春の3部リーグで優勝し、2部へ昇格したばかりのチーム。身長180ながら最高到達点340cmというジャンプ力と、幅の広いプレイにはいつもお世話になっております(つくばユナイテッドSun GAIAの看板選手、というもう一つの顔を持つ)、ことエース大木貴之についつい目を奪われそうになるが、実はリベロ久田利彦を中心とした堅い守りと多彩な攻撃による全員バレー、というところに宇都宮大学というチームの魅力がある。

勝戦 筑波大学3-2宇都宮大学

28-30 25-22 25-19 28-30 17-15
※名前の前にある数字は背番号、カッコ数字は学年*1
筑波)13椿山(2)→8村松(3)→1鈴木(4)→5篠村(3)→6冨田(3)→9安井(3) L2外川(4) ※サーブスタートのセットは9から
宇都宮)7武田(3)→6高木(3)→12堀込(2)→10大木(2)→11服部(4)→8山崎(3) L13久田(4) ※サーブスタートではないとき6から
6人の平均身長は、筑波189cm、宇都宮180.5cm(東日本インカレプログラムによる)。
第1セット、立ち上がりは両者互角。筑波が篠村、安井のブロックで抜け出したかと思いきや、宇都宮も大木が筑波のブロックの上から打ち抜いたり高木の速攻を交えたりして応酬する。筑波が抜け出しかけては宇都宮が追いすがる、という展開で20点過ぎまでじわじわと進む、けっこうめまぐるしい展開。
武田のシャープなスパイクで宇都宮が先にセットポイントを握ったものの、その後筑波もジュースに持ち込む。筑波の大木包囲網が機能しているようで機能していない。大木が打つとわかっていても止められず、そこにマークが厳しくなると逆に他のアタッカーが利いてくる。筑波27-26からセッター堀込が篠村をブロックし、その後は一度大木がスパイクミスしたが、そこから3連続得点した宇都宮が一気にセットをものにした。
第2セットは中盤過ぎから筑波優勢に進む。キャプテン鈴木にはやや固さがあったが、元気印の安井、そして村松がチームを引っ張る。宇都宮は筑波の強打をことごとく拾い(上に上げ)、そこから何とか(大木が2段トスを上げると会場から「あぁ」という声が聞こえるのだが、ところがどっこい、これがけっこうすぐ決まったりするのだ)…という状況ではあるものの、ちょっとした意思疎通やコンビの乱れが見られ、前のセットほど迫ってくるものはなかった。筑波がセットタイに持ち込む。
第3セットは15点過ぎから筑波が一気に抜け出した。大木包囲網はそこそこ功を奏し始めているらしい。また、どうしても平均身長の低い宇都宮に疲れが出てきている状況か…とは感じられてきた。センター椿山の気合いの入った、しかしどこかしら以前より柔らかい表情に、更なる成長した感を抱きつつ。
迎えた第4セット、宇都宮が息を吹き返す。ブロックが非常に的確で、ワンタッチからの攻撃の切り返しが非常に見ていて気持ち良い。当方もどちらを応援すればよいのかわからなくなっていた。
とはいえ、地力に勝る(はずの)筑波、16-17から一気に3連続得点でひっくり返し、20点過ぎからは執拗なサイドアウトの応酬。村松のサーブミスでセットポイントを握った宇都宮が、最後は大木のサーブ*2から対角の武田が決めて、フルセットに突入。
ファイナルセットがまた圧巻だった。またしても「宇都宮ここまでか…と思った10-6→14-11から、宇都宮が実に4連続得点で逆マッチポイントを握るところまで行った。それまで際どいところをついてはいたがサーブミスが多かったセッター堀込がサーバーの時であった。
14-15から、筑波は篠村の速攻で再度ジュースへ。その篠村が大木を止めてマッチポイントを握った筑波、最後は大木がブロックを避けたのかスパイクをふかしてしまい、なんとか筑波がこの勝負をものにしたのであった。

試合後

試合後のミーティングが至近で始まり、そこでの都澤監督第一声が「宇都宮大学には負けた」だった。「1点を取るためのプレー」について、宇都宮と筑波に差があったとも言及されていた。おそらく筑波から見たらそういう試合だったのだろう。
他方、終了直後の宇都宮、大木の表情が妙に印象に残った。やることはやったという思いと、どこかで結果を惜しむ思いと。将来、プレミアとの入替戦に臨んだときに見られそうな表情を今見てしまったのか…と何故かそんな思いを持った。
閉会式を見ようとメイン会場に向かったところ、宇都宮女子が円陣を組んで試合後のミーティングを行なっていた。その場で、男子が大激戦…という話題に及び、その場が非常に盛り上がっていたのが印象に残った。それは、女子の試合の采配をふるっていて、男子の試合を観られなかった黒後監督も同じ思いだったようで。
宇都宮は(いろいろなコンディション次第なのだろうが)今の関東2部ではけっこういいところに行くのではないか、何となく東日本インカレを見たときにそう思っていたのだが、きょう試合を観てその思いを新たにした。否、行かなきゃならんでしょうと。この熱戦が、10月末に再現されないことを、今はひたすら願うのみである。

*1:筑波は学年順に背番号がついている。宇都宮は背番号固定

*2:最初はどかーんとジャンプサーブだったが、その後ほぼフローター