/ja あやつる YmrDhalmel

バレーボールを見た記録が多いです。主に北で、たまに南で。

ひとつの礎として-2013年10月27日・午後

時計の短い針は4のあたりをさしていた。隣のコートでおこなわれていた女子の試合は、既に4試合を終えていた。撤収の準備をするひとと、次の試合を待ちながら試合を見つめているひとでごった返していた。

この対戦で、左側にその大学の名前を書くのは初めてだ。

ここまでのあらすじ

わたしが記憶している限り。

2012/10/28(秋リーグ1巡目)札幌大学 3-2 北海学園大学

25-22 18-25 25-21 22-25 20-18
見に行けなかった。現地からなにかの便りが届くのを、ちょこちょこチェックしながら待っていた。

2013/6/16(選手権準決勝)札幌大学 3-2 北海学園大学

17-25 27-29 25-17 25-23 15-10
激闘の中で両キャプテンが足を攣ってコートを離れた。記憶が、時折断片的になる。ふりっかーにあげた写真も、試合の途中で途切れている。そして、最後には、目が真っ赤になっている。叫んでいた記憶しかない。所用で最後まで会場にいられなかったのだが、ベスト7に学園から4年生2人が選ばれたということをあとから聞き、それはとても嬉しかった。

2013/10/14(秋リーグ1巡目)札幌大学 3-2 北海学園大学

25-16 25-22 18-25 20-25 15-13
学園は必死で追い上げたが、最後の最後で札大の「総力戦」が功を奏した。ほんとうに、もう少しだった。

ここ1年、この対戦でフルセットが3回あった。いずれも札大がギリギリのところを勝った。何度でも書くが、勿論勝ち負けだけが何かを左右するわけではない。でも、もう、次が、このチームでの、ラストチャンス。

10月27日、第3試合。

隣の女子コートが4試合を終えたところで、第3試合は未だ終わっていなかった。第1試合がフルセットだったので、もともと始まったのも遅かった。試合が始まる前の、なんというか、不思議な感覚を思い出す。第2試合を終えて1部残留を決めた旭川医大が、その喜びをあらわにしていた。「サインコサイン」と叫べば「タンジェント」と応える、あるいは「ほっかいどうは」に「でっかいどう」と返すその喜びのうねりの中に、明らかに別な方面からの「ファイヤーファイヤー」なる声が被さった。旭医陣営がにこにこしながらそれに返していた。と思うことにした。
北海学園は、前日の東海札幌との(おそらくこれも道内での)最終戦で、為す術なく敗れた。優勝の望みは完全に断たれた。それを引きずっているかどうかは、瞬時にはわからなかった。もうあと2試合しかないのだから、何にせよ悔いが残らないようになれば…としか思えなかった。だが、ちょっと心配だった。

第1セット 札大 25-16 北海学園

あっという間に終わってしまった。今見ているのはなんだろう。なんなのだろう。これが集大成になっちゃっていいのだろうか。まさか。

第2セット 北海学園 25-16 札大

…と思ったらいきなり合わせ鏡になって驚いた。って、驚いた、というのが適切なのかどうかはわからないが、もしかして、これはあるぞ、と思ったら、急に乗っかっていた何かが軽くなったような気がした。札大が後半にちょっとリベロを池田に替えた。前の日の試合では全く出ていなかった。札大のこれまで当たっていた大江あたりがじわじわと拾われ、封じられてきた。ざわざわした。が、あくまでも合わせ鏡。まだよくわからない。

第3セット 札大 25-19 北海学園

じわじわと札大がリードを広げる。とにかくミドルからの松田が止まらない。早々と学園がタイムを2回取り、早々と札大が20点に乗せる。オポジットを安藤から#16前田にスイッチ。まったくもぅ、札大の二桁(=1年生)は多士済々、それぞれに味わい深い。その前田が坂本を止めるなどしてさらに札大が突き進む。24点を先に取る。ただし、学園がそこから3点返した。

第4セット 北海学園 26-24 札大

序盤、札大が1点を取って、その次のプレーがおわったところで、唐突に試合が止まる。すべてをつぶさに見ていたわけではない。が、断片的に「あれー?」と言っていた気がする。おそらくは札大が3回で返せずに学園の得点、に見えたプレイがあったのだが、何故か主審は「札大コートにボールが落ちた」として、学園にポイントを入れようとした。ただ、そこで札大は出崎主将が主審に状況を確認しに行って、その確認がけっこう長かった。その後主審はこんどは坂本主将を呼んで話をしていた…(その後なんだかよくわからなかったのだが)そのプレーはノーカウントになった。どうもこのリーグ、判定や判定以前に進行そのもの、審判のゲームのつくりかたになんとなくもやもやするところが多すぎる。確か前の日もそんなことを思って、ついつい本部席にいた審判もすなるとある方にすがるような目線を送ってしまったが、このとき本部席を見やったら、すがるような目線を送れる方の姿が見えなかった。すがってどうするというわけではないし、そもそもこのブログではシンパンガーと書かないと決めていたのだが…メモには、1回学園に入ったと思って書いた「1」と、ネクストサーバーの(4)←斉藤の記述を二重線で消したあとが残っている。なんとなく怪訝そうな顔をしつつトイードはもう一度サーブを打ち、そこから斉藤が決めた。長い中断時間を経て、当初と同じように点が動いた。
その後、ブレイクがしばしば続いたのだが、どちらが離されるでも離れるでもないままに、終盤まで試合は進んでいった。終盤はだんだんブレイク自体が難しくなった。その中で学園がじわじわリードするところで鳥肌が立ち始めた。札大は20点前後でタイム2回を遣った。
そして24-21と学園がリードし、すわフルセットか、というところで、札大はこのセットも好調の松田が決めて、そしてサーバーは出崎。まずサーブで崩し、大江が決めて1点を返した。24-23。ここで学園が1つ残していたタイムアウトを取った。しかし、その直後にこんどは出崎がサービスエースを決める。デュース。
ここからが、この日の結果に繋がる何か、だったのかもしれない。学園も4年生がぐいぐいと引っ張った。ブレイクが必須になってしまったデュースの展開、まず曽泉で切って抜け出し、最後は坂本が決めきった。
どういうわけか自分が見ているコート「ではない」側がセットを取る展開が続いているが、最後はそのままではないような気がしていた。ある意味暗示かもしれないし、そうじゃないのかもしれない。

第5セット 北海学園 15-12 札大

正直なところ、憶えていないのだ。憶えていない感は恐らく選手権と同じくらいだった。ただ、15点目が入るまで、いける!いける!と思っていた。時を経るたび、その姿を見るたび、じわじわとだが、力をつけてきたチーム。段々見ていてどきどきわくわくが増えてきたチーム。しっかり守り切り、そこからちゃんと攻め込んだ。ここなら拾えるだろう、これなら止まるだろう、そういう局面が試合の中でいっぱい見られた。それが嬉しかった。嬉しいから勝ち負けじゃない、けれども、嬉しいからこそ、やっぱりちゃんと勝てないと悔しかった。
序盤はサーブミスが少なからずあって、その中でも決まるところを模索しつつであったように見えた斉藤が、コートチェンジ後に思いっきり攻めてサーブポイントを取った。そして、双方のエースが輝いた。2点差で迎えた出崎のサーブも1回で切り返し学園がマッチポイント。そのときリードが3点あった。そこから、畳みかけられることは、なかった。
長い長い、この試合でしばしば見られた長い長いラリーのような、長い長い戦い。その終盤で、ひとつのかたちになったのを見た。泣いている選手を見かけたのはこれが初めてではなかった。が、泣いているの意味が全然違った。こんなことは初めてだ。初めてだった。

終戦はこれからで、さらにその先に全日本インカレという締めくくりの場がある。だが、いや、だからこそ、ようやく「この日の画像が無い」ショックから立ち直りかけた今、文字を残しておくこととする。目を閉じて、それぞれの方々の尽力にしばし敬礼をしつつ。そして、残り少ないこのチームの日々を、もっともっと愉しんでいきたいと思いつつ。