/ja あやつる YmrDhalmel

バレーボールを見た記録が多いです。主に北で、たまに南で。

「NECスポーツの挑戦!新しい企業スポーツビジネスのカタチ」

昨日、NECスポーツの牽引者で、この4月からグリーンロケッツの監督に就任した細谷直氏の講演会(主催:フォトクリエイト社)へ行ってきた。
内容は、ここ5年ほど進めてこられたNECスポーツの考え方、進めた施策、今後の課題等。質疑応答タイムもたっぷりあり、その後参加者どうしの懇親会も行われた。

以下はメモ。当方は「いちバレーボールファン」として参加。メモ起こしだが誤字脱字文脈の乱れなどはご指摘いただければ幸い。

内容

2002年頃、「廃部スパイラル」
  • 「分社化経営時代」に突入。これはNECグループにおいても例外ではなく、グループ各社も自助努力による経営の必要が生じてきた。これに伴い各事業所においてもプロパーが減り、協力会社・関連会社に所属する従業者が増え、グループ全体の求心力、忠誠心の低下が問題視された。
  • 各企業のスポーツ部については、1995年頃から廃部が相次ぎ、「企業スポーツはだめだ」と言われた。NECにおいてもいくつかのスポーツ部が廃部されたが、このままではNECに「スポーツ」という資産が失われてしまうという危機感が生まれ、そこから新しい方向性の追求が始まった。
まず「内」から
  • 男子バレーボール(ブルーロケッツ)女子バレーボール(レッドロケッツラグビーグリーンロケッツ)と愛称を共通化、共通性のあるロゴ・マスコットを据えた。この3つのマスコットは互いに関連性がある設定で、宇宙へ羽ばたくというイメージを持つ*1
  • まずはNECグループ(総勢約10万人)内での基盤作りに重点を置いた。NECスポーツの求心力を高め、スポーツをNECの有益な経営資源とすることをまず目指した。
  • NECグループ社員を対象とした後援会(ファンクラブ)を立ち上げた。この後援会を軸に、ITを駆使したコミュニティづくりを行っている(社内向け2002年、社外含めては2004年から)。
  • 社(グループ)内を優先させたのは、移り気であろう社外のファンと比較して離れない(コアな)基盤づくりが可能であるからである。
  • NECスポーツの後援会長は取締役副社長(営業のトップ)。また、各グループ会社のトップをボードメンバー(理事)に据える。ボードメンバーの主な役割は、優秀な成績を収めたチームのメンバーと一緒に写真に収まること(そして、ボードメンバーは翌日自然と写真付きのレターを社内に送付してくれるのだそうである)。営業部門を巻き込むことにより、会社の経営資源にすることが出来る。
  • グループ各社とスポーツの関わりが深くなったため、選手を(人件費を持って)自社に出向させるというグループ会社も増加している。
  • NECグループ各社の社員が大声で「NEC」と叫ぶ機会はスポーツの試合でしかない。この「機会」は「財産」である。
  • 入社式の際に後援会員の募集が行われる。いちばん社に対する愛着が強い入社時に訴求。

社(グループ)内の多くを味方につけることによって、「潰すに潰せない」チームを維持させることが可能になる

社会貢献
  • 社内で年間16000人を動員(この数には試合への集客は含まない。試合への動員は約40000人)。
  • 社会貢献(教室など)年間80000人規模
  • スポーツチームの存在が、自治体へのアプローチをも可能とする。従って、営業の経費でチームが地方へ行くケースもあり。
  • 現在後援会員は18000人(うちグループ内13000人)。最近は株主総会でもこの人数を発表している。
  • 「スポーツ文化が有する教育的価値」の浸透。現在「タグラグビー」が学校の体育の授業で取り上げられるための取り組みも行っている(我孫子市流山市で試行開始されている)将来的にはここにグリーンロケッツの選手が絡んでいくことも。
  • 後援会員の年齢層は20代前半(新人+)と40代が多く、30代はエアポケット気味。上記取り組みは「親世代」への訴求も兼ねている。教育委員会(→学校の先生)を通じてホームゲームのチラシを配って貰う等あり。社会、地域貢献につながる普及活動。
経営資源としてのスポーツ
  • 上記コミュニティの存在により、副産物としての収益が生まれ、それがチームの強化につなげられる仕組みが生まれた。
  • 「スポーツ」が福利厚生ではなく、自助努力でやっていけるビジネスであるとアピールできるようになっている→好循環
  • チームの収益はインセンティブや採用にあてるしくみ
  • 選手のモチベーションを上げるための方策は取るが、あくまでも選手は社員であり、プロ選手の導入は行っていない
  • スポーツ部門の収益(粗利ベース)は2006年度で7.5億(前年度から倍以上)
IT資源の活用・連動
  • 後援会独自の集客ツール・チケットシステムを有する
  • 基本的にチケットレスであり、PC・携帯電話で処理完了する仕組みを持つ。これにより事務作業や分析にかかる手間を軽減できるようになった。
  • 入場時間等のデータも取れるため、それにより開場時間のコントロールなどもできるようになった。
  • データベースを分析することにより、きめの細かいキャンペーンが打てるようになった(Webマーケット、モバイルキャンペーン、One to Oneマーケティング等)。
  • 無党派、一見さん層をコアに持って行きたい。
  • ライブ中継には現在対応していないが今後やっていきたそう。

質疑応答より

陸上部はいったい…?
  • 2002年(廃部スパイラルの頃)ラグビーと共に俎上に乗っていたが、そこでラグビーが優勝して(以下略
選手のセカンドキャリアは?
  • 引退時、ほとんどの選手がそのまま社に残る。社員であるため業務もこなしており、引退に向けての準備もその過程の中で行なっている。
  • 社会人としてのふるまいや言動については、入社から3年のうちにしっかり教育していく。
各リーグ戦において、入場料収入は各競技団体とどのように分けるのか
  • Vリーグの場合は利益を機構と折半(ただしホームゲーム独自の企画シートについてはホームチームの取り分となる。このシートを購入したくファンクラブに入るひとが増えている)
  • ラグビーの場合はVリーグほど取り決めが進んでいない。ばらまかれるチケットも少なからずある。
社外のファンは「外様」的な感覚になっていないか?
  • 意識はしている。「社員ばかり優遇されていませんか?」と聞かれることはままあり、払拭に努めてはいるがその印象が抜けないようではある。ファンの思いとのギャップは感じるところなので改善には努めていかなければ。
後援会に入っているひとの何割が試合を見に来るか?
  • 約30%。
Vリーグはほかのチームが廃部続きで数が減ってしまったが、NECから機構等へのはたらきかけは?
  • 廃部スパイラルについてはVリーグが非常に危惧しているところである。機構には企業スポーツ路線を貫くべきか、クラブ路線へ行くべきかというところでの迷いがあり、現在は折衷的な位置づけとしている。
  • ラグビーは、トップリーグが「企業スポーツを軸にした…」と明確に打ち出していることがVリーグと大きく異なる。ちなみにラグビーは意外と廃部が少ない(伊勢丹など5チーム程度。旧新日鐵釜石はクラブ化)。会社の経営が苦しくても廃部にしない、大手企業によってなりたつリーグであるから、そこから外れるのは社としてのプライドが許さないという意識が強くある。

*1:青ロケ:アポロ、赤ロケ:ルナ、緑ロケマルスというのだそうだ