サンガイアのコートから加藤陽一が去って
きょう、黒鷲旗が終わった。昨日は夕方まで出かけていたのでTVを見られなかったのだが、きょうは女子の決勝からちらちらと見ていた。自分がちょっと前にその場にいて、そこでいろいろな心と体の動きを伴っていた、ということが、ニワカにぴんとこない。
わたしは最初の2日間試合を見た。翌3日がグループ戦の最終日。つくばユナイテッドSun GAIAは日体大に敗れてその日程を終えた。その後、この大会限りで現役引退を表明していた加藤陽一「選手」を送るセレモニーが、コート内外でおこなわれたということは、各方面(たとえばこちらとか!→http://ameblo.jp/ka10ka2ya9/entry-11841165904.html)で非常に詳しく紹介されている。その後、「区切り」である黒鷲旗の大会期間中、いろいろなチームのいろいろな動きについて、(現在進行形で)語られたり気をもんだり怒ったり泣いたり…という日々が続いた。今まで「シーズンの終わりで」とか「区切りで」とか言われたときに、わたしは大学に軸足を置いている立場?から「いやシーズンまっただ中だから」「終わってないから」というように、割と混ぜ返していたのだが、今回ばかりはそうもいかないような気がしている。こんなことは、恐らくバレーボールを見始めて、初めてなのではないだろうかと思っている*1。
5月3日、わたしは北大で大学リーグを見ていた。黒鷲から帰ってきた旨を何人かの方に話した。「(加藤さんの)プレイはどんな感じなのか、いけているのか、凄いのか」と聞かれた。凄かったですよと答えた。「加藤さん凄い」の意味合いは、恐らく最初に加藤さんが登場した頃に語られた「凄い」とまた違うジャンルだったのかもしれない(脈々と繋がってきていることはあるにせよ)。加藤さんがサンガイアに入って5シーズン目の今季(とはいえ、実質2シーズンほどろくに見られていないシーズンがあるわけだが)、ここまで「凄い」と思って目を見開いてその場に居合わせたのは、初めてだったんじゃないかなと思っていた。バレーボールのおもしろさ、奥深さを、その体全体を遣って表現する、その姿が、見ているわたしの心をおおきく動かした。
というか、サンガイアのコートそのものが、これまでになく、おおきくうねっていたのだと思う。初めて見られたときから、その一体感が高まるコートを見ているのが、とても楽しくなってきたのだ。わたしがサンガイアを応援しているというときに、そのチームの目指す方向性とか理念とかに惹かれましたとはよく言っていたが、ここまで試合自体にのめり込んだことが、これまであったんだろうか(ここでわたしにツッコみたいコトバをご用意されている方はいるかもしれませんが、もう暫くお待ちください)。
V・チャレンジリーグが終わり、チャレンジマッチには出られないことになって、それでも黒鷲には出られることになった、そのサンガイアの黒鷲を見ることをたのしみにしている日々の中で、加藤さんが黒鷲限りで引退することを知った。そのときにエントリを書いたのだが、その日から黒鷲が始まるまで、わたしは、加藤さんがいて、それぞれのチームのメンバーが加藤さんと「共鳴している」コートが見られるのが黒鷲限りで、その後どうなるのだろう、それぞれのメンバーが何をどう思い、「その後」に向けてどう進むのだろうか、ということがとても気に掛かるようになった。4月に何回か練習が公開されると聞き、見られれば何かを感じられるのだろうとは思ったが、さすがにその場に赴くことは難しかった。
大阪での2日間、「加藤さんのいるコートの光景」を全力で目とあたらしいカメラのファインダーに焼き付けようとしていた。サンガイアは9年目のシーズンを終えようとしていた。10年目のシーズンを迎えるにあたり、この大会をどう過ごすのか。自分にとって、それを見届けるのが第一義だった。
試合が終わってからは、正面入り口横にあるチームブースに赴いた。試合を終えた選手たちがブースに揃っていた。加藤さんは椅子に座り、その傍らに多くのファンが列を為していた。ブースではファンからのメッセージも募っていて、売店に立つ選手たちが、グッズ販売の呼び込みとメッセージの募集の声かけをしていた。募集の声をかけながら「いっぱい書きたいことあるなぁ」と遠い目になっていた選手も見かけた。帰り際に「みんな、どんなふうに加藤さんを送るんだろう」などと思いを巡らせつつ、わたしもそのグッズ販売ブースであたらしいレプリカユニフォームを買い、加藤さんのサインの列に並び、ユニフォームの真ん中にサインをいただいて、ほんとうに愉しませていただいてありがとうございます、と、これまでのお礼をした。
あのとき3位は寂しかったし悔しかったけど、3位になったから黒鷲に来られた、そのことに感謝したくなった。
3日の試合がどうであったかわからないし、まだまだ「加藤さんがコートにいない」状況が想像できなくて震えているのだが、加藤さんの存在の大きさはそのままに、どうしてもやってくる「その後」に、楽しみが増えるようなサンガイアが見られて良かった、そう思っている。
特に、わたしと同郷のこの方が。最初にこのチームで見た時よりも、この前見た時よりも、じわじわとチームの中核に据わりつつあることを、とても頼もしく思った。全力助走からのとても高いレフトアタックを見た時に、そしてその後トスを上げたひとと喜び合ったときに、なんだか目頭が熱くなった。この先、ちゃんと始まるんだ、と思った。
3日の夜に、刈谷の分も泣いた。ほんとに久しぶりに声をあげて泣いた。思いっきり泣いたら、ちゃんと前を向いて、この先のことを待てるような気がした。
関連
- 加藤さん引退の報に触れたその日に書いたエントリ:「すごいや。ぼくらは いつか おれい するです。」 - /ja あやつる YmrDhalmel
*1:それも珍しいすね