/ja あやつる YmrDhalmel

バレーボールを見た記録が多いです。主に北で、たまに南で。

「上司がいないチーム」の、味なタイムアウト

今シーズン、V・チャレンジリーグの各試合を見ていて、常々不思議だなと思っていたことがあった。不思議ではあるが確証が持てないことがたくさんあったので、書くのを控えていた。

つくばユナイテッドSun GAIAが、試合中に取るタイムアウトについてのことである。

「つくばは監督がタイムアウトの指示を出さない。実は加藤か和井田が出している」というのは、前々からそれとなく耳にしていた。観戦しているのに「耳にしていた」だけというのは非常に変な話なのだが、これまで「つくばがタイムアウトを取る瞬間」を見逃し続けていた。まぁ、タイムアウトを取るまでもない、という試合も少なからずあったわけだが。
タイムアウトのタイミングが遅いチーム、というのには、ある程度慣れているつもり*1だったが、つくばの場合は明らかに「普通のタイミングではない」。フルセットで敗れた富士通戦では、一進一退する試合展開であるにも関わらず、つくばは明らかにタイムを取らなさすぎに見えた。確かに、監督は動かなかった。監督は事前にプログラミングされていて、その動きをするbotなのだろうかとついつい勘違いしてしまいそうになるほどだった。

ゼロからスタートするファイナルラウンドの初戦でいきなり逆転のフルセット負けを喫し、あとがなくなったつくば。ファイナルラウンド2戦目の大同特殊鋼戦も、かなりタフな試合になった。
セットポイント大同2-1で迎えた、この試合の第4セット。序盤から2点くらいのビハインドのまま、追いつけそうで追いつけない。20点近くでようやく肩を並べて、それからデュースに入る。そんな展開の中、ついに、わたしは初めて目撃した。

25-25。つくばが再びデュースに持ち込み、サーバーの加藤が下がろうかというところで、コートの中から和井田がタイムアウトの指示を出していた。

ああ、噂はほんとうだったのか、と思った。それと同時に、「どうして今?」と一瞬疑問に思った。しかし、試合が再開されてみると、これがまた非常にこのチームらしい、絶妙なタイミングでのタイムアウトであったことに気がついた。
ことしのつくばはサーブで攻めてブロックで圧倒するチームである*2。そのチームが「更に攻め行く」ためにキモチを前にもっていくためのタイムアウト。よくよく考えると、タイムアウトはピンチの時に取らなければならないと決まっているわけではない。1セット2回までというのが決まっているだけだ。これは味があるなぁ、と、じわじわ効いてきたのであった。
実は2回目のタイムアウトも、1回目同様、つくばがサーブに入る直前であった。27-26とセットポイントを握り、菊池がサーブに入るところで、やはり和井田がゼスチャーをした。このセットポイントでは決めきれなかったが、何らかの加速効果があったのだろうか、粘りに粘ってなんとかセットを取りきった。「このセットを落としたら全てが終わる」土壇場での、味なタイムアウトであった。

稲城の試合が終わってから、先週J SPORTSで放映された、青島健太氏によるつくばユナイテッドSun GAIA特集の録画を改めて視聴した。そこでは練習風景と、松田監督および加藤のインタビューがあった。加藤はインタビューの中で、このチームを「上司のいない組織」であると言った。そこでは各々が意見を出し合い、よりよいものを創り出そうとする姿があるという。
監督がそれとして前面に出ないこと自体がこの監督の特徴であり、各々の「個」が立ってくるこのチームの色なのだろうか。バレー自体は昨シーズンまでのほうが好きで、監督は監督やってる場合じゃなくて、もっともっとバレーボール界そのものにコミットしてってほしいとかそのためにはまず上に上がらないと見てもらえないしどうするよとか…ことしのつくばに対するそのあたりの考えは開幕時からあまり変わっていないのだが、それでも、ちょっと、このチームに対してわくわくしてきたのである。あと3試合。どんな展開が待っているのだろうか。

*1:たとえば筑波大学あたりだと、明らかにコートの中で考えさせてからタイムアウト、みたいな教育的運用が為されているように見えている

*2:個人的には攻守のバランスが取れていた去年までのバレーのほうが好みではあるのだが、それは別の話