旅の記憶(2)コンダクター
ファン感謝祭の翌日に、大分で9人制の大会があると聞いた。三好循環器科が9人制のチームを持っていて、しばしば全国大会などで活躍しているというのは知ってはいたが、たまたま滞在のタイミングで見られる機会があるとは思ってもみなかった。しかも*1、このチームを多く見る方にとっても珍しいひとが参戦するという。そこで、感謝祭の翌日、朝から会場に導いていただいた。
普段、自分の「身の回りで」バレーボールに触れるなかで、9人制を見る機会というのは、実はそう多くはない。この規模の大会といえば、こちらでは6人制のクラブだなぁと思った。恐らく、おとながガチでバレーボールをやっていく舞台が、主に6人制にあるか、9人制にあるか。そこには地域性もあるのかもしれない。何故か、というのは、よくわからないが。
日常に9人制はあまり見られないが、一昨年の12月、きたえーるで櫻田記念が開催されたので、それを少々見ることが出来て、概ねわたしの9人制に関する記憶と記録はこのときの印象に基づいている。
主に関東の大学勢が、その進路に9人制の実業団のチームを選ぶことが多いことや、ことしに入って6人制のV・チャレンジから9人制の実業団への転身を図ったひとのニュースを聞くことがあったりして、なんというか、どういう立ち位置で9人制を捉えていたらいいのか、ということについては、個人的に少々複雑な思いがある。それはそれとして、主に6人制を見る人間が初めて9人制を見たときからずっと思っているのは、9人制固有のルールによる「違い」と「難しさ」、そして、9人制で、選手の新たな魅力に触れることが多いということ。そこで活きて際立ってくる存在があるのだということ。それだけは、どこかにずっとあるのかな。というのは、変わらないことである。
初めて9人制の試合を見るきっかけになったチームを応援に行って以来、ほんとうに久々に、大分で9人制を見た。
開会式で「地震の影響で遣えない体育館があって会場変更があって…」ということばがあり、そこでまた、その地の現況に思いを馳せたりしたわけである。
試合が始まった。各チーム、所狭しと（コートはちょっと広めです）、コートに集結した。普段よりも登場人物の多いコートを目の前にすると、なるべくファインダーの中に多くのひとを納めたくなる。
主審*2、副審、線審は、前の試合のチーム（第1試合は第3試合のチーム）が分担していた。記録はどう取っていたのかよくわからない。線審のうちのふたりが細長い紙を手に持っていた。サーブはローテーションするのだが、ローテーションによって立ち位置が変わるわけではない（という表現で合っているのかわからない）ので、細長い紙を持った線審が、各チームのサーブ順確認も務めているのだという。なお、全国的にそうだというわけではないみたいだ*3。
三好循環器科EKG（えーかーげー＝9人制のチーム名）は第3試合からの登場だった。このチームには、ヴァイセアドラーのOB（懐かしい方から記憶に新しい…新しいもなにも、前日に引退挨拶をした方まで…）、9人制専属でプレーする選手、そして、ヴァイセアドラーの現役選手も一部参戦している。9人制だからこそなのだろう。
ウォーミングアップを見ていた。ウォーミングアップひとつ見ていても、そこに新鮮な発見がある。ネットプレーの練習に、そこそこの時間がかけられていたりもした。
櫻田記念を見た時に、9人制のセッターって指揮者みたいだなぁと思った。指揮者が楽団を見渡してそれぞれを見据えて組み立てていく。その姿を横位置でがっちり狙いたくなっていた。それをずっと思っていた。此の場所で、此のシチュエーションで、そんな場面を撮ろうとしない理由はなかった。恐らくそのあたりはセッターの個性もチームの個性もあるのだろうから、思い描いていたイメージとは、また違うものではあったのかもしれないが、それでも、コンダクターはそこにいた。わたしもまた、確実に、コンダクターに導かれていたのだ。
EKGの試合はつごう2つ見られた。ぎりぎりまでいようとしたが、決勝戦まではいられなかった。ただ、そのなかで、このチームの、このチームとしての熟成され方とか、選手それぞれの、今まで見たことがなかった一面とか、魅力とか、様々なものを感じ取ることが出来た。教えてくださった方と導いてくださった方とそこでプレイをしていてくださった方々に感謝しつつ、胸一杯荷物いっぱいで大分をあとにしたのであった。
いろいろなしゃしん（赤、鮮やかだったなぁ）
