/ja あやつる YmrDhalmel

バレーボールを見た記録が多いです。主に北で、たまに南で。

「バレーを観る」

このブログを読み続けていらっしゃる奇特な方は既に気がついているだろうが、これを書いている者は相当のバレーボールジャンキーである。

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

という本のタイトルを「バレーを観る」に空目して(更にはそうアタマの中で略して)買って読んでしまうほどに。

当方は将棋のことをあまりよく知らない。おそらく知っているのは歩兵と香車と桂馬の(成る前の)動かし方くらいである。それでもテレビやさまざまな文章*1を通して、将棋周辺に流れる空気、棋士のたたずまい…などには何とも言えぬ高貴で、しかも高速回転するアタマ…というイメージを感じてはいる。
勿論、本書を読み進めながらその雰囲気を思い起こすことはあったのだが、本書においては、それ以外のインパクトが大きすぎた。それは、普段将棋ではないものを「観て」いる自分にとって「観る」という行為自体についての数々の刺激であった。

今日はこれから所沢へバレー(ワールドリーグ所沢大会)を観に行くのだが、その前に、「観る」ことについて本書から感じたこと、考えたことを、主に2つのポイントから書き留めておく。

観て感じたことは、そのそばから消えていく

本書において当方が心を揺さぶられることばがいっぱいあったのは、「第三章 将棋を観る楽しみ」であった。
この章において引用されていた、著者の2006/12/5付の毎日新聞コラムの一節に、何とも言えず唸った。

「逆に言えば、一局の将棋について控え室で考えられた膨大な指し手、その周囲に果てしなく広がる潜在的可能性空間、感想戦で対局者によって披瀝された深い読み、つまり「将棋の魅力」を形づくる情報量のかなりの部分が、棋譜と観戦記にその将棋が凝縮された時点でごっそり失われていることに驚いたのだ。

深く観ること、観たことを記録として残すことについて考える時には、その過程で失われていくものをどれだけ失わずに拾っていくか…についても、思いを致さなければならないのだろう。
「ネット上には文字制限がない」というのも御意。ただし、文章に、それを読ませるだけの「力」と「深さ」は必要なのだろうなとは、しみじみ思う。
当方が2008/09 V・チャレンジリーグ男子「最終戦」inつくば(2009/03/20-22) | バレーボールマガジンを書いたとき、まずは書き始める段階で「こりゃ相当長くなる」と思った。中西さんから依頼を受けたときにそれを伝えたところ、「Web媒体だからこそ、是非存分やっちゃってください」という力強いお答えをいただいた。ちょうどシゴトのインターバルだったこともあり、調子に乗って書いた。そのときのことを思い出した。尤も、これこそリアルタイムではないし、まだまだいろいろとわき出てくることがあるのだ。ここまで書いても。
本書には第2章、および第5章に、著者によるリアルタイム観戦記が掲載されているが、時間の制約の中でこれだけ濃い記録が発せられるということに、ただただ感嘆せずにはいられない。「事前準備」として、さまざまな資料をPC内にまとめておくことなど、今後自分が「観て」いくことに参考にしていきたいことがたくさんあった*2

明日に繋がる解説とは?

その第5章「竜王戦観戦記」において、なんとも印象に残ったのが、この「3段階解説」だった。このことも、字数制限のないネットならでは、なのだろう。

解説役の佐藤康光棋王に、昼食休憩、28手目△4四銀の局面での「5級向け解説」と「初段向け解説」と「五段向け解説」をお願いした。

前述の通り、当方5級以下につき、その解説の内容自体は解さなかったのだが、それぞれがそれぞれのレベルに合わせられているのだな…というのはなんとなく感じられた。この解説に限らず、将棋の世界はことばが豊かだな…と感じさせられていた。
日頃バレーを観ていて、当方がついつい欲したくなるのが、この「5級向け解説」なのだ。バレーに限らずいろいろなスポーツの解説で、ここが上手くこなれているのはどこなのだろう(NHKの体操とかかなぁ、やっぱり)。伝え手が伝える専門ではないことはわかっていながらも、もっともっと聞きたいし読みたいのである。勿論、ソレはなくとも観戦は成り立っているのだが、どうも土台がゆるいままここに至っているような気がしてならない。
なお、バレー周辺における「五段向け解説」は、最近けっこうブログ界隈でも見かける。そもそも国内トッププレイヤーであってトップの指導者であるこの方とか、こことかこことか。しかし…
そういった点で、最近唸った「初段向け解説」エントリーはコチラかもしれぬ→オポジット論 - Stay Foolish

結局

このブログにかかっては、何の話をしてもバレーの話になってしまう…のは困ったものだ。
著者が最近人体実験を中止した、ということだったので、安心してひっそりと書き留めておくとともに、折に触れてまた読み返すことにするのだ。
そろそろ準備して所沢にいかなきゃー。

*1:最近読んでいないが、週刊文春に連載されている先崎さんのエッセイとか

*2:しかしすべては難しそうだ。電源無いし…